奨学金の利用と返済のポイント
奨学金の返済が困難になって自己破産までする人が増えている、というニュースを耳にするようになりました。この問題についてちょっと考察してみます。
奨学金とは
「奨学金」は、経済的な理由や家庭の事情で「進学が難しい方」に向けて、学費の付与や貸与を行う制度です。奨学金制度を利用することで、進学が無理と思っていた方でも、実現させることが出来るわけです。
奨学金制度、貸与型と給付型の2つのタイプ
奨学金制度は、貸与型と給付型の2つに分けることが出来ます。
1.貸与型
利用者は、奨学金という名前の借金をします。
借金ですから、返済の必要があります。
なお、返済にあたっては、無利息のパターン、有利息のパターンがあります。
有利息の場合の利率は、利用する奨学金を運営する組織により異なります。
2.給付型
利用者は、奨学金として、お金を頂きます。
借金ではありませんから、返済の必要はありません。
返済の必要のない給付型の奨学金を利用したいものですが、条件は厳しく枠も狭いです。
学業成績の優秀な生徒はもちろん、多様性を重視する時代ですから、枠からはみ出したような生徒でも、いろいろな個性を伸ばしてあげられるような社会補助制度があればいいんですが。
奨学金の利息について
さて、本題に入ります。
最近、奨学金の返済が厳しくて、生活が立ち行かなくなり、お金のためだけに自分が望まない労働(風俗など)や自己破産してしまうケースを耳にします。
本来は、経済的事情をフォローする制度のはずなのに、これはどういうことなのでしょう。
奨学金の利息は、銀行ローンや消費者金融ローンよりも低い利率です。
例えば、日本学生支援機構の奨学金の最新の利息を確認すると、0.1%と、かなり低い数字になっています。(「平成28年度 貸与利率一覧」より)
例えば、300万円に対する利息が1年間で3000円ですから、ほぼ無利息に近いと言えるのではないでしょうか。
昨今の奨学金延滞に対しての厳しい意見として
「返済出来ないのは、利用者の甘えである。」
という言葉も、これだけで判断するとうなづける気がします。
但し、延滞してしまうと話が変わってきます。
最大で10%の利率で延滞金が課せられてしまうのです。
300万円に対する10%は30万円ですから、小さい金額ではありません。
月額にならしても利息だけで25000円になります。
突然、一般的なローンを組んだのと同じような負担が発生してしまいます。
ちなみに、無利息の貸与型でも、延滞金は発生しますので、ご注意を。
このような仕組みから、奨学金が返せなくなる理由のひとつは、延滞した際のペナルティの大きさにあるように思います。奨学金制度は、自分を助けてくれた存在だから、借金とはいえ、毎月返済しているときは、自分の味方のような安心感があるかもしれませんが、延滞が始まると、急に返済のハードルがあがりますので、くれぐれも注意が必要です。
(奨学金が返せなくなる理由は、他にもいろいろ思いつきますが、ここでは触れません。)
奨学金の返済のポイント
以上のことも含め、私が思う、奨学金の返済のポイントを書いてみます。
1.奨学金は自分の借金であり、返済すべき義務があるということを自覚する。
2.延滞すると途端にハードルが高くなることを忘れない。
3.延滞しそうになったら、すぐに奨学金窓口に相談する。
ちなみに、奨学金は、勉強するために借りたお金だから、返せなくても仕方がない、という甘えは、まったく通用しません。
しかし、甘えは通用しませんが、返済が難しい状況になった場合、いろいろと打つ手がある、ということは、覚えておいた方がいいです。
ポイントの3で書いたように、奨学金の返済が難しくなったら、まずは、早めに奨学金窓口に相談をしましょう。経済的な理由、病気や事故、進学などの理由であれば、返還の猶予や一部、減額、免除が認められることがあります。
・ 疾病や災害、事故に遭われた方
・ 失業や経済困難な状況にある
・ 育児や産休中の方
・ 生活保護を受給中の方
・ 別の学校への進学で、返済が難しい。
理由が思いつかなくても、とにかく相談しましょう。返済が出来ないままほっといて、延滞金が発生してしまうと、途端に返済の難易度が上がってしまいます。ここで、返せないから、とほっといてしまうと、ずるずると負の側にひきずられてしまいます。とにかく早めに手を打つことが大切です。
また、奨学金の返済のために、他のローンを利用する、という手もありますが、利息を考えた場合、それが有効な手段となる可能性は低いと思います。多くの場合、新たな借金の利率の方が、奨学金の延滞利率よりも高いためです。
奨学金の返済のために、他のローンを利用するのは、絶対に避けましょう。
(延滞金の利率よりも、低利のローンを利用出来るときは、例外となります。)
奨学金の返済と過払い金
一般的に、奨学金の返済で、過払い金が発生することはありません。
それは、奨学金の定める利息が、法定利息を守っているからです。
悪徳な奨学金制度であれば、もしかすると、過払い金が発生していることもあるかもしれませんが、私は聞いたことがありません。
過払い金の発生条件については、他のページに書きましたので、よろしければご覧ください。
まとめ
経済的な面で進学が困難な中、奨学金制度を利用して、進学し勉学に励んで卒業出来る、という制度は、とても素晴らしいものだと思いますが、返済時のことまでよく検討した上で利用しないと、破たんしてしまう可能性もあります。上手に使いたいものですね。